【自賠責より弁護士基準】交通事故の慰謝料の相場と計算方法を解説

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    2023/05/20

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    2023/05/20

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目次

【自賠責より弁護士基準】交通事故の慰謝料の相場と計算方法を解説
交通事故にあいケガをした場合、加害者に対し、治療にかかった費用などを請求できます。もっとも、それ以外に慰謝料を請求することもできます。
慰謝料とは、精神的苦痛に対する金銭的な賠償をいいます。
この記事では、交通事故にあった場合に
  • 請求できる慰謝料の種類
  • 慰謝料の金額の相場
  • 慰謝料の計算方法
を弁護士が解説します。

交通事故で請求できる慰謝料は3種類

まず、交通事故の場合に請求できる慰謝料の種類について説明します。
交通事故で請求できる慰謝料は3種類あります。それは、
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料
の3つです。
以下、それぞれの内容を見ていきましょう。

(1)入通院慰謝料

まず、入通院慰謝料です。これは、事故により入院や通院をしなければならなくなったことによる精神的苦痛(=痛い・辛い)に対して支払われる賠償金です。
入通院慰謝料は、入通院にかかった治療費や交通費とは別に請求可能です。
基本的に、入通院期間が長くなるほど高額になります。
実際に入院・通院をしたときのみ請求可能です。

(2)後遺障害慰謝料

次に、後遺障害慰謝料です。
これは、後遺障害による精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。
交通事故によりケガをした場合、治療を続けてもそれ以上回復しない症状(=後遺症)が残ることがあります。後遺障害慰謝料は、この後遺症について後遺障害の認定を受けることにより請求できます。
後遺障害の認定は、障害の重さによって1~14級の14段階の等級に分かれます。
後遺障害慰謝料は、この等級ごとに金額が変わってきます。

(3)死亡慰謝料

最後に、死亡慰謝料です。
これは、交通事故で被害者が死亡してしまった場合、死亡したことによる精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。
死亡慰謝料は2種類に分けられます。

イ 死亡者本人の精神的苦痛に対して支払われるもの
ロ 遺族の精神的苦痛に対して支払われるもの

です。

このうち、イを請求する権利は死亡者本人にありますが、死亡により遺族に相続されるため、通常はイ・ロともに遺族が請求することになります。

以上ご紹介した3つの慰謝料は、いずれも人身事故の場合に請求できるものであり、物損事故では原則として請求できません。

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交通事故の慰謝料の相場と計算方法

ご紹介した3つの慰謝料は、その金額の相場と計算方法があらかじめ決まっています。
それぞれに、自賠責の基準、任意保険の基準、弁護士の基準(裁判所の基準ともいいます)の3つの基準があり、どの基準を用いるかによって計算方法や相場が変わってきます。

3つの基準を金額の大きい順に並べると、一般的に

弁護士の基準>任意保険の基準>自賠責の基準

となります。

このうち、任意保険の基準については各保険会社が独自の基準を持っており、金額は非公開となっています。
そこで、以下では自賠責の基準と弁護士の基準の2つを中心に紹介します(いずれも、2020年4月1日以降に起きた事故における金額です)。

(1)入通院慰謝料の相場と計算方法

まず、入通院慰謝料の相場と計算方法から説明します。

(1-1)自賠責の基準の場合

自賠責の基準の計算式では、次のイ・ロのうち少ないほうの金額が採用されます。

イ (入院日数+通院日数)×2×4300円
ロ 入通院期間(=治療を開始した日から終わった日までの日数)×4300円

例えば、治療を開始してからが終わるまでに30日、その間の入院が10日、通院が15日の場合、

イ (10日+15日)×2×4300円=21万5000円
ロ 30日×4300円=12万9000円

イとロを比べると、ロのほうが少ないため、ロの12万9000円が採用されます。

(1-2)弁護士の基準の場合

弁護士の基準では、入院と通院の期間によって定められた算出表があり、その表に従って算出されます。
算出表には、他覚症状がある場合(別表Ⅰ)とない場合(別表Ⅱ)の2種類があります。
レントゲン撮影やMRI画像などによって客観的な異常が見られる場合は別表Ⅰ、見られない場合は別表Ⅱが用いられ、別表Ⅰのほうが高額になります。
縦軸(B)が通院期間、横軸(A)が入院期間で、それぞれの期間が交差する箇所が慰謝料金額の目安となります(1ヶ月は30日として計算します)。

【他覚症状がある場合】

別表(原則)(単位:万円)

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 →A ↓B 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 193 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286
【他覚症状がない場合】

別表(むち打ち症で他覚症状がない場合)(単位:万円)

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 →A ↓B 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 178 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183
例えば、
  • 他覚症状があり(別表Ⅰ)、入院を1ヶ月、通院を1ヶ月した場合、77万円となります。
  • 他覚症状がなく(別表Ⅱ)、入院を1ヶ月、通院を1ヶ月した場合、52万円となります。
このように、他覚症状がある場合(別表Ⅰ)のほうが金額は高くなります。
基本的に入通院の期間が長くなるほど慰謝料は高くなります。
もっとも、金額は入通院の日数ではなく期間に基づいて算出されるため、毎日通院すれば金額が高くなるということはありません。
ただし、期間中の通院日数があまりにも少ない場合は、上記の表の金額が減額されることがあります。

(2)後遺障害慰謝料の相場と計算方法

続いて、後遺障害慰謝料の相場と計算方法について説明します。
後遺障害とは、これ以上治療を続けても良くも悪くもならない状態、つまり症状固定に達したときに残った障害をいいます。
後遺障害慰謝料を請求するためには、前提として、自動車損害賠償保障法(自賠法)施行令が定める後遺障害の等級認定が必要となります。
等級の認定を得るためには、担当医から後遺症の症状が固定したことを証明する後遺障害診断書を作成してもらい、診断書を含めた必要書類一式を所定の機関(損害保険料算出機構など)に提出して審査してもらいます。
等級認定の審査は、通常2~3ヶ月かかります。その結果、症状に応じて後遺障害の等級が認定されます。
後遺障害の等級は、症状の重さごとに1~14級まであります。1級が最も重い(高い)等級となります。
等級が高くなるほど、慰謝料の額も高額になります。
なお、後遺障害の中でも、特に脳や神経系統の障害は症状が外部に現れず、自分自身でも気付かないことがあります。
そこで、交通事故にあったら、早めに病院を受診してCTやMRIなどの精密検査を受けることをおすすめします。

(2-1)自賠責の基準の場合

自賠責の基準を用いた場合の後遺障害慰謝料の金額は、次の表のとおりです。
例えば、交通事故によるケガで片方の肩関節が動かなくなってしまい、後遺障害5級(6号)の認定を受けた場合、618万円となります。

後遺障害慰謝料の支払い基準(2020年4月1日以降に起きた事故の場合)

自賠責の基準

第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級
1150万円 998万円 861万円 737万円 618万円 512万円 419万円
第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級
331万円 249万円 190万円 136万円 94万円 57万円 32万円

要介護の場合

第1級 第2級
1650万円 1203万円

(2-2)弁護士の基準の場合

これに対し、弁護士の基準を用いた場合の慰謝料金額は、次の表のとおりです。
弁護士の基準を用いた場合、慰謝料金額は自賠責の基準と比較して2倍以上の額になります。

後遺障害慰謝料の支払い基準(2020年4月1日以降に起きた事故の場合)

弁護士の基準

第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級
2800万円 2370万円 1990万円 1670万円 1400万円 1180万円 1000万円
第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級
830万円 690万円 550万円 420万円 290万円 180万円 110万円
自賠責の基準の金額と弁護士の基準の金額を比較すると、次の表のようになります。

自賠責の基準と弁護士の基準の比較(単位:万円)
第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級
弁護士の基準 2800 2370 1990 1670 1400 1180
自賠責の基準 1150 998 861 737 618 512
金額差(倍) 2.43 2.37 2.31 2.27 2.27 2.30


第7級 第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級
1000 830 690 550 420 290 180 110
419 331 249 190 136 94 57 32
2.39 2.51 2.77 2.89 3.09 3.09 3.16 3.44
例えば、後遺障害5級の認定を受けた場合、自賠責の基準では618万円なのに対し、弁護士の基準では1400万円となります。弁護士の基準のほうが自賠責の基準の約2.3倍の金額となっているのがお分かりかと思います。

後遺障害慰謝料の金額について事故の相手方などと示談交渉をする際、被害者自身(または、加入している保険会社の示談代行サービス)により交渉すると、加害者側の保険会社は、自賠責の基準や任意保険の基準といった低い金額でまとめようとしてきます。
これに対し、示談交渉を弁護士に依頼すれば、弁護士の基準を用いて交渉がなされることになります。

つまり、弁護士が交渉したほうが、より高額な金額を獲得できる可能性があります。
交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリットはここにあります。

(3)死亡慰謝料の相場と計算方法

最後に、死亡慰謝料の相場と計算方法について説明します。

(3-1)自賠責の基準の場合

自賠責の基準では、死亡した本人の死亡慰謝料は400万円です。
これに加え、遺族の慰謝料は次の通りです。
  • 遺族が1名の場合:550万円
  • 遺族が2名の場合:650万円
  • 遺族が3名以上の場合:750万円
  • 死亡した本人から扶養されていた場合:+200万円
(いずれも、2020年4月1日以降に発生した事故による場合。)

なお、ここにいう「遺族」とは、原則として死亡者本人の父母・配偶者・子に限られます(民法第711条)。

(3-2)弁護士の基準の場合

これに対し、弁護士の基準では、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」というものを用います。
これは、過去の裁判例で認められた金額をもとにしており、自賠責の基準、任意保険の基準と比べて高額になります。
死亡した本人の死亡慰謝料と遺族の慰謝料を合算して支払われます。
金額は、死亡した本人の家族内における立場によって変わります。

具体的には、死亡したのが
  • 一家の大黒柱の場合:2800万円
  • 母親、配偶者の場合:2500万円
  • その他の場合:2000万~2500万円
となります。これらを基準にし、個別の事由を考慮して金額が増減されます。
例えば、飲酒運転やひき逃げなど、事故の内容が悪質だった場合は、金額が増額される場合もあります。

【まとめ】自賠責保険についてお悩みの方は弁護士へのご相談をおすすめします

これまで説明してきたように、交通事故による慰謝料は、自賠責の基準を用いると最低限の金額になることが多いです。
しかし、弁護士の基準を用いれば、自賠責の基準よりも増額できる可能性が高くなります。
加害者側の任意保険会社と示談交渉をするにあたり、交渉を弁護士に依頼すれば、弁護士の基準を用いて被害者に有利な保険金の支払いをスムーズに受けられるようになります。
また、交渉は弁護士に任せて、治療に専念できるというメリットもあります。
そのため、交通事故の慰謝料についてお悩みの場合、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
交通事故の慰謝料請求については、アディーレ法律事務所へご相談ください。

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この記事の監修弁護士

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

中西 博亮の顔写真
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