離婚した専業主婦も年金を受け取れる?年金分割について弁護士が解説
作成日
2024/01/04
更新日
2024/03/12
- ※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。
目次
特に、夫がいなくても老後に十分な年金を受け取れるのか、不安を感じてはいませんか?
かつては、本人が納めた年金保険料のみを年金額の計算の基礎としていました。
そのため、専業主婦本人が納めた年金保険料は基本的に少額であることから、離婚した専業主婦が受け取れる年金額が少ないという問題がありました。
しかし、現在は「年金分割」といって、夫が婚姻期間(結婚している期間)中に納めた厚生年金保険料の半分を、離婚した妻の年金額の計算の基礎にできるようになっています。
離婚するなら、老後の生活も含めて経済的に困窮することがないように備えておくことが重要です。
そこで、このコラムでは、年金分割の概要や注意点について解説します。
離婚した専業主婦でも年金を受け取れる?
「年金分割」とは、離婚した夫婦が婚姻期間中に支払った保険料を分割する制度です。
ただし、離婚すれば必ず夫の年金を分割してもらえるわけではありません。
「年金分割」は、あくまでも厚生年金(共済年金を含む)を対象にした制度であるため、夫婦ともに国民年金のみに加入している場合、年金分割の対象にはなりません。
そもそも、国民年金の加入者は、第1号被保険者から第3号被保険者に分かれています。
第2号被保険者:会社員や公務員
第3号被保険者:2号被保険者に扶養されている、年収130万円未満の妻や夫(例:専業主婦や専業主夫)
そして、年金は一般的に、下の図のような3階建ての構造で説明されます。
2.夫が会社員、公務員の場合
(1)夫が学生、自営業、フリーランスの場合
そして、第1号被保険者の配偶者(例:専業主婦)もまた第1号被保険者であり、各々で国民年金保険料を納めます。
この場合、離婚したとしても夫名義の年金を分割することはできません。
(2)夫が会社員、公務員の場合
この場合、夫は国民年金に加えて厚生年金に加入しています。
したがって、離婚した場合、夫の厚生年金が年金分割の対象となります。
なお、この場合も、1階部分の国民年金は分割の対象になりません。
あくまで厚生年金部分のみが年金分割の対象です。
2015年10月1日から共済年金は厚生年金に一元化されましたが、かつて公務員は厚生年金ではなく、共済年金に加入していました。
しかし、年金制度の一元化を図るため、公務員も共済年金ではなく厚生年金に加入する形に変更されています。
年金分割には2種類ある
それぞれの概要や利用するための条件について、一緒に見ていきましょう。
(1)合意分割制度
合意分割制度では、年金をどのくらいの割合で分割するかは夫婦の話合いで決めます。決まらない場合は、家庭裁判所の調停や審判で決めることになります。
合意分割制度を利用する条件
・ 婚姻期間中に標準報酬月額、標準賞与額などの厚生年金記録(共済組合の組合員である期間を含む)があること
・ 当事者双方による合意があること
(合意できない場合は裁判手続により按分割合を決定していること)
・ 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年)を経過していないこと
(2)3号分割制度
この制度を利用するために元配偶者との合意などは必要なく、第3号被保険者単独で請求できます。
3号分割制度を利用する条件
・ 2008年4月1日以降の婚姻期間中、国民年金第3号被保険者であった期間の標準報酬月額、標準賞与額といった厚生年金記録があること
・ 請求期限(原則として、離婚した日の翌日から2年)を経過していないこと
年金分割における3つのリスク
しかし、「年金分割」の制度ができたことで、離婚へのハードルは低くなっているといえます。
ただし、年金分割には次の3つのリスクがあるので注意が必要です。
2.期限を超えると原則、分割を請求できない
3.遺族年金は受け取れない
離婚に踏み切る前に、これらのリスクを確認しておきましょう。
(1)年金の全額が分割されるわけではない
さらにそのうち、厚生年金または共済年金のみが分割対象であり、国民年金や企業年金は対象外となります。
年金の種類 | 内容 | 受け取れる人 | |
---|---|---|---|
1階 部分 |
(老齢)基礎年金 | 受け取る金額は年金の種類にかかわらず、一定額となる。 | 国民年金の加入者 |
2階 部分 |
報酬比例部分 | 年金保険料が給与額をもとに決まるため、給与が高いほど保険料が高く、年金額も高くなる。 | 厚生年金や共済年金の加入者のみ |
3階 部分 |
企業年金 |
会社ごとの上乗せ年金。同じ金額の年金を受け取れる確定給付年金と、同じ金額の保険料を支払うが、受け取れる年金額は年金の運用実績により左右される確定拠出年金がある。 | 厚生年金や共済年金の加入者のみ |
(2)期限を超えると原則、分割を請求できない
年金分割の請求期限は、離婚等をした日の翌日から起算して原則2年です。
請求期限まで2年もあると思わず、早めの行動をおすすめします。
(3)遺族年金は受け取れない
離婚により、遺族厚生年金を受け取ることはできなくなります。
【まとめ】夫が会社員や公務員なら、夫の厚生年金の分割を請求できる!
度です。
ただし、厚生年金(共済年金を含む)を対象にした制度であるため、夫婦とも
に国民年金のみに加入している場合には対象にならない点にご注意ください。
なお、年金分割制度には「合意分割制度」と「3号分割制度」の2つがあり、
それぞれ分割割合の決め方が異なることを覚えておきましょう。
年金分割の請求期限は、離婚等をした日の翌日から起算して原則2年です。
また、離婚すると遺族厚生年金を受け取れなくなります。
離婚を検討中であれば、離婚後の生活に備えておくことが重要です。
離婚における年金分割でお悩みの方は、離婚問題を取り扱う弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談し、離婚後の生活設計を考えておくとよいでしょう。
慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
- ※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。